長年トレーナーをやっていて、ふと気づいたこと。
「うちの子、食べないんです!」
飼い主さんがそう訴えるワンちゃんの多くが、食べないはずなのに、なぜか痩せてはいない。むしろ、ぽっちゃりさんが多いくらい?(あくまでも経験による私見です)
問題を抱えているワンちゃんのお宅に伺うと、ごくごく最初の段階で、食事に関する問題(多くの場合は偏食)を指導させていただくケースが少なくありません。たとえご依頼の問題が吠えや咬みなど、一見食事とは関係ないように思えても、トレーナーとして必要性を感じれば、まず食事の改善をお願いしています。
犬の問題行動はそれだけが単体で起こるものではなく、ベースにある無軌道な生活や飼い主さんとのぎくしゃくした関係が、問題行動となって現れてくる場合が多いからです。
たかが食、されど食。
食事は生き物にとって生活の基本であり、生活のリズムを作るのに欠かせない働きをします。
野生の動物は食物を得るために死に物狂いで狩りをしたり、よい餌場を求めて長く困難な旅をしたり、人間は日々の糧を稼ぐためにあくせく働きます。
ペットの犬たちはどうでしょう?
食べ物は、時間が来れば、飼い主さんが運んでくるものだ。
それが「当たり前」と、お宅のワンちゃんは思っていませんか?
しつけに食べ物を用いることについては、賛否両論あります。が、食べることは生き物の基本。それだけに、食事を与えてくれる飼い主さんとの関係に、良くも悪くも大きく影響するものです。しつけの観点から言っても、食をコントロールすることは、とてもとても重要なことなのです。
今、多くの家庭犬は、暇を持て余しています。
どうか、犬たちを「食べるために」働かせてあげてください。
生きている実感を感じさせてあげてください。
また昨今は、気候変動や紛争により、世界のあちこちで食糧危機が起こっています。日本でも、この先ずっと、今のような不自由ない食料が確保できるとは限らないかもしれません。災害で避難しなければならないことだって、あるかもしれません。
そんな時、何でも喜んで食べられる犬にしておくことは、犬の命にも関わる重大事です。
さらに、日々の食事は、犬の健康のバロメーターでもあります。
毎日ガツガツ完食する子が、食いつきが悪かったり、まったく食べなかったりしたら?
食事の様子で、犬の不調にいち早く気付くことができます。
日ごろから偏食で、食べたり食べなかったりする子だと、こうはいきません。
オスワリができたらオヤツをあげることだけが、しつけではありません。
食をめぐる犬の生活を整えること。
それが「食育」であり、「犬のしつけ」でもあります。
「食を制する者は、犬を制す」
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